小さな頃に何度も何度もすり切れるほど読んだ絵本、誰でも一冊くらいはあるでしょう。今その絵本はどこにありますか? 大人になった今だからこそ、改めて声に出して読んで気づくこと、親になったからこそ子供たちに読み聞かせをして共有できるもの、絵本の中にはたくさん詰まっています。そして、そんな“心に花を咲かせてくれる”絵本の魅力を伝え続けているのが、「ちいさなえほんやひだまり」の青田正徳さん。絵本の素晴らしさを、ポカポカしたひだまりで再体験してみませんか?



絵本は“仮縫い”の状態。聞き手の中で物語は完成する
「絵本とは何かというと、絵と文が一つになる世界です。読み聞かせをすると、聞き手は目で絵を見て、耳でお話を聞いて、自分の感性でお話を作り上げるんですね。だから、いい作品は文章で説明しすぎていません。細かいところは絵にゆだねているので、聞き手は絵を見ながら想像します。そういう意味で、絵本そのものはまだ完成していない“仮縫い”の状態。言葉はできるだけ削ることで、聞き手の中で物語が膨らみ、面白さになるのです。読書とはまったく違う世界なんですね。」

絵本は読むたびに違う物語を感じさせてくれる
「私の絵本の原点は『花の好きな牛』という作品。初めて読んだのは小学校2年生のときです。その後27歳のときに再会して、“すごくいい本だったんだなあ”って感じました。絵本は、読むたびに毎回印象が変わります。初めは“次はどうなるのかな?”と思って絵を見てお話を聞いているのが、何度も読むうちに言葉で語られない部分を想像するようになります。また、読み聞かせをする状況によっても変わります。読み手の思いが声になって聞き手に伝わるのですね。例えば私が50人の子供達相手に読み聞かせをするのと、親が子にするのとでは、全然伝わり方が違うのです。」

絵本には深いメッセージが込められている
「ここに『いちご』という新宮晋さんの絵本があります。いちごの苗が越冬し、実がなるまでを5カ国語で表現しているのですが、1粒のいちごのなかに甘さも厳しさも表現されている。1粒のいちごさえ、人間は自然の力を借りなければ作れないことが、何度も読むことでわかってきます。レイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』の中に“知ることは感じることの半分も重要じゃない”という言葉がありますが、絵本は教えるものではなく感じるものということなんです。優れた絵本は、 “命をもらうことに対する感謝の気持ち”と“次の世代に命を伝えていくこと”という、変わらない価値観が表現されています。これは食育にもつながります。だから、大人にこそいい絵本を手にとって、感じて気づいていただきたいなと思います。私はいい絵本を“手渡す人”として、ひだまりをやっています。」

■ちいさなえほんやひだまり
店では2,500冊以上の絵本の蔵書のほか、シュタイナー教育から誕生したウォルドルフ人形や木のおもちゃがあり、親子でゆっくり過ごしていくお客さまが多い。

住所/札幌市手稲区新発寒3条4丁目3-20
電話/011-695-2120
営業時間/10:00〜19:00
営業日/金曜・土曜・日曜・祝日

■生誕100年、赤羽末吉の絵本展
6月26日(土)〜8月16日(月)に、青田さんが愛する『スーホの白い馬』を描いた赤羽末吉さんの絵本展を開催。詳細はイベントページをご参照ください。
http://www.fil-sapporo.com/event.html




青田 正徳 Masanori Aota
1952年、遠軽町生まれ。1979年から15年間、児童図書出版社の販売代理店に勤務し、絵(芸術)と言葉(文学)からなる絵本の魅力にとりつかれる。その後、札幌市内にただ一軒あった絵本専門店の閉店を機に『絵本の良さをわかる人がいないと伝わらない』と、喫茶店の一角を借りて絵本専門店をスタート。1,000冊だった蔵書が現在は2,500冊以上。絵本専門店のほか、講演会のために全道約80市町村を巡り、いい絵本の素晴らしさ、読み聞かせの大切さを伝えている。

「絵本の魅力を伝えたいという思いがこちらにもグイグイ伝わってくる青田さん。お会いするたびに読み聞かせをしてくださって、そのたびに心から癒され、欲しい絵本が増えるのです。“いい絵本は読むたびに新しい発見がある”──そんな宝もののような絵本が、ひだまりの棚にはたっぷり並んでいるのです」(古川)



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