11. 2015







 ●私小説●
「境界ジャーニー 〜『Sakai』の車窓から……〜」

タヅコ。

田んぼに鶴の子と書く。
地味なのか派手なのかわからない、また画数でさえも中途半端な名を持つ。
染めるのも諦めたようなカサカサの髪の毛をきりりとひっつめ高い位置でくくり
前髪だけは薄くたらす謎のヘアスタイルも持つ。

始発が動き始めると同時にタヅコのちいさな店も活動をはじめ
夕方のラッシュが終わる頃にすすぼけたシャッターをぎーぎーがらがらと下ろす。
高校を卒業してして以来、1日の大半を彼女は『この場所』で過ごし、
長い長い日々の糧を得てきたのだ。

毎朝必ず、7時05分の電車に乗る私は改札を抜ける前に
タヅコの店に寄りタバコを一箱求める。
たまには甘いサクサクしたものなども同時に求める。

タヅコはさながらプロ盆踊り師のように
スキのない流れるような所作で私の希望商品を棚から取り
手渡し金を受け取りお客様に不快感を与えないってところの
ホントギリッギリ引っかかってるかな…?といった笑顔及び礼の言葉をくれる。

タヅコの店は平日のみの営業である。
平日しかタヅコに会うことは叶わない。
これは特に週末の休みがあるとは限らない私にとって(超一方的に)
非常に寂しいことである。

ある朝、
いつものようにタヅコとの(ディス)コミニュケーション時、異変は感じていたのだ。
プロ盆踊り師のようないつもの流れるような所作にほんの一瞬、迷いを見た。
何も挟まってなどいない奥歯に、挟めるものを探すように7時05分発の車中、
私はタヅコのつまづきに思いを馳せる。

私とて生半可な気持ちでここ数年(超一方的に)
タヅコと向き合ってきた訳ではないのだ。


我考えろーーー!ここであきらめることはまさに万死に値するのだーーーーー
我思い出せーーーーー!
我感じるな考えろーーーー!わーーーー!
そうだーーーーーーー!!!!!!!!!
我わかったーーーーーーー!!!!!!!!ーーーーーーーーーー !!!!!!!!!!!!!!!!

場所です。

毎日見るともなく見ていた店内商品配置場所。
意外にも記憶の奥底にしっかりと刻まれていた。
各々商品の設置場所が違う!!!!!のでは………….????



翌朝、
全身目か!というくらいに見開いてタヅコの店を素早く隈なく観察する。
あきらかに違和感だ。
商品の場所どころか品数及び数量も減っているような気がした。嫌な予感がする。
それでなくともすすぼけた各棚のすすぼけ部分がフューチャーされてしまう。
タヅコときたらそれを隠すようなこともせず、
今朝も『ギリ笑顔』(みたいなもの)とタバコを投げてよこす。

棚どころかタヅコまでもがあきらかにすすぼけはじめたぞ!
と、危惧しはじめたすすぼけ10日目の朝。
平日にもかかわらずついにシャッターの開いていない朝を迎える。

辛い…タヅコ何処?
もうタバコもサクサクした甘いものもやめよう。
タヅコから受け取ることができなきゃ意味ない。
タヅコがいたから私もいたんだ……………。


_________________________


タヅコが私の前から消えてしまったあの日から3週間目の夜。
タヅコが日々粛々と歴史を刻み着々とすすぼけさせてきた、
ちいさなちいさなあの場所の解体現場に遭遇した。
虫の知らせでも何でもなくって忙しくって忙しくって終電で帰宅してみたら、
まあこの有様です。
私はなんとなく立ち去り難く、遠巻きにぼんやりそれを眺める。

黄色いヘルメットをだらりとかぶった男たちが
かつてタヅコの城だったものをみるみるひしゃげた鉄くずの山に変えてゆく。
どんどんはずされどんどん積み上げられてゆく残骸も元の建物の高さには到底届かず
まとめちゃったらこんなにもちいさきことだったのか。

などとちょっとまあ感傷的になっていたところ
突然積み上げられた鉄くずが、白、赤、緑のまばゆいばかりの光を放ち
四方八方に舞い上がりくるくる回り出し、みるみる心地よい暖かさに包まれ

これは夢か現か?

我目を見開くことすら難儀するほど気が遠くなり……



やがて芳しいコーヒーの香り漂い
あたためますか
フォークおいれしますか
この荷物はここから送れますか
そうですかだめですか
700円以上ですのでこちらのクジを引け
袋ははお分けしますか
袋はいらないです
電気代はこちらのボタンにタッチしてください
本もたくさん
花だって時々ある
7時から11時までとは少々看板に偽り有りじゃないの


私は毎朝タバコと
そして、甘いものを2つも求める。

タヅコはピカピカしたレジカウンターの奥で
串に刺ささった肉やイモなどを機械みたいなやつで
黙々と揚げている。


髪の毛は栗色に染まっており、
しかし前髪だけは譲れない。


Fin



●Tappie (偏愛境界随筆家)
著者プロフィール
料理、弁当、洋服等こさえ生計を立てるソロ中年女子。
*『プロ盆踊り師』などどいう職業は聞いたこともありません。すみません。



●FIL Backnumber(2009年〜2010年)/http://www.fil-sapporo.com/fil
2011.03 2011.04 2011.05 2011.06 2011.07 2011.08 2011.09 2011.10 2011.11 2011.12 2012.01 2012.02 2012.03
2012.04 2012.05 2012.06 2012.07 2012.08 2012.09 2012.10 2012.11 2012.12 2013.01 2013.02 2013.03 2013.04
2013.05 2013.06 2013.07 2013.08 2013.09 2013.10 2013.11 2013.12 2014.01 2014.02 2014.03 2014.04 2014.05 2014.06 2014.07 2014.08 2014.09 2014.10 2014.11 2014.12 2015.01 2015.02 2015.03 2015.04 2015.05 2015.06 2015.07 2015.08 2015.09 2015.10









★時代に左右されない…ある意味、時代を完全に無視した素敵な「喫茶店と本」「レコード」「スナックと唄」を毎月ご紹介していきます。



Cafe & Book

★第十九回 喫茶店と本 / 兼田広樹
「すかんぴん」と 「痴者の食卓」

今月のテーマは「私小説」

ひとつ書いてやろうかしらと
にわかに色めき立つ私の欲も

いざ筆をとると萎萎

意気地なしです

書いては捨て書いては捨てて
時間だけが過ぎていきました

締切を二日過ぎた祝日の午後
雪より早く真っ白になった私

薄い顔と薄い胸板と薄い逸話
薄っぺらな日常を呪いました

いっそのこと裸で暴れてやろうか
一部始終を克明に書いてやろうか

そう考えもしましたが
外は寒いのでやめます

激動の人生は誰かに譲ります

今月の一冊は現代私小説の旗手
西村賢太の「痴者の食卓」です

今作でも息をするように
恋人を殴りまくる主人公

強烈な嫌悪と怖いもの見たさ
またも彼の術中に陥りました

持ったが病、と云えばそれまでの話に違いない。(一部抜粋)

性癖や趣味嗜好なんて
イボみたいなものです

どこに出るか
それだけです

コーヒーを飲んで本を読むことと
暴言を吐いて暴力を振るうことが
どう違うのかの説明がつきません

今月の喫茶店は「すかんぴん」

そのまま小説になりそうな店名

カルチャーの宝石箱です

マスターおすすめの音楽と
熱々の珈琲を楽しみました

日本のアングラフォークに
強く強く頭を殴られました

暫くはパンチドランカーです



■すかんぴん
札幌市中央区南8条西6丁目

■痴者の食卓
西村賢太(新潮社)


●プロフィール
兼田広樹(SILKS代表)
ブランディングの仕事をしています





Record


★vol'19 タケチャスのチャス・エンターティメント
/ 井上武志

〜はぁぁ、、、ため息を2種類〜
「 Françoise Hardy / Message Personnel / LP 」

ちょっとは目立つ姿形しているからなのか、
はたまた接客業をしているからなのか、
それとも単純にフォルムが丸いからか…
昔からほんと見知らぬ方に人に
話しかけられたりするわけだけれど。

でもまぁ…人違いっていうこともたまにはあって。

今までで一番の人違いは、昔まだ20代の頃。
(つまりまだ身体の丸みがキツくなかった時期になる YO ! )


*****

ある日、古着屋で服をみていたら女の子が( いきなり )

女の子: あの…(パンクバンド)◯◯のヴォーカルの????さんですよね?

タケ:いや、違いますよ

女の子:えー?ウソだ!

タケ:いや、ほんと違いますよ

女の子:ウソ言わないで下さい!

タケ:いや、だから…違うって。

女の子:お忍びですか??私大ファンだからわかるんですよ。だって、顔も背格好もそうだし何より、そのニットの被り方。その被り方しているの????さんだけだもん!

大好きです!今日LIVEですよね?いいんですか?こんなとこにいて。

タケ:(駄目だ…と観念)
いやー、やっぱファンにはわかっちゃうんだな。嘘言ってゴメンよ。 いつも応援してくれてありがとう!そう今からLIVEのリハなんだ。もし時間あったらLIVEに遊びにきてくれよ!(俺の中での出がらしパンク感全開で) じゃ、後でな!(…と出がらしパンク感アゲイン)


******

かれこれ、20年は経ってから言うのもなんだけど、

正直、そのバンドってヤツもヴォーカルの名前も早口すぎてまったく聞き取れなかった WA !


…なんだかお題に乗っかった都合のいい

” 私小説 ” な展開になっちゃったけど、


今回紹介するアルバムもまんま「 私小説 」 が邦題のコチラ。


■ Françoise Hardy / Message Personnel / LP

アイドルとして出発し商業的な成功を収めながらも、 自身のレーベルを設立するなど独自の世界を追求していた、フランスを代表する才色兼備S.S.W. 「 フランソワーズ・アルディ 」が出産後にリリースした復帰作であり代表作のひとつ、それが 1973年『 Message Personnel(邦題:私小説)』。

イエイエやシャンソンものではないフレンチ最初の1枚にもオススメの逸品。

ジャケ、内容ともに素晴らしい必携盤!ってことで
チャス、三つ ( C:マチャアキ風で ) !



●プロフィール:Takechas Records / 店主 ・タケチャス
「 ジャンルレスでグッドミュージック 」 をモットーに、小さな音楽ソーホーから世界へ 日々発信するレコード・CDのセレクトショップ 「タケチャス・レコーズ 」。" 顔の見え るネット・ショップ " から" 週末会えるレコード屋 " へ。WEBサイトに加えて隠れ家サロンなレコード・ショップとして、 2014年実店舗もOPENさせた音のコンシェルジュ、かかりつけのレコード屋さんの名物店主は、自身のキャラクター・グッズも好評で至極ご満悦のご様子。
http://www.takechas.com



   
    もう充分にしあわせそうなママだが、その胸中は!?
スナックと唄

〜スナック糸 モリ夫ママの〜
★第19回 垂乳根の母を背おいて、
そのあまり軽きに泣きて3曲カラオケ
「ドラマ「ルーツ」に見る人生とは?」の巻


今年1年を振り返るにはまだ早いかもしれませんが
ちょっと先走ってみましょう。

大きく2015年を見てみたら散々な年でしたわ!!
裁判おこしてももいいぐらいのとんでもない事件もあり、一時人間不振にもなりましたが、 まわりの仲間に救われて今は「言霊」を信じポジティブに生きております。まぁ、怨みは忘れませんがね。

さて、皆さんアメリカのテレビドラマ「ルーツ」を
ご覧になったことはおありでしょうか?


アフリカから黒人奴隷としてアメリカに連れて来られた クンタキンテをはじめ、それから代々子孫が続き 自由を得るまでの物語なのですがとにかく嫌な話。 だって、いい事があっても次には絶対嫌なことが起こるのですから。

やった!恋人が出来た!→離れ離れにされる
やった!白人の友達が出来た!→裏切られる


といった感じで。

だから「何もおこらないで〜」と観てしまうドラマなのですよ。 そうなると番組としても成立しないのはわかってますがね。

そう。悪いことがあった後は良い事がおこる。
もしくはその逆で良い事があった後は悪いことがおこる。


とある有名芸能人が良い事があった時は家に帰って、飼っている金魚を一匹殺すというという都市伝説(?)を聞いたことがありますが、まぁ、そこまでいくと極端な話で「いけにえ」レベルの話になってしまいますが、事実であればとても賛成できる事ではありませんな。

で、とある人が言ってました。

「ラック(幸運)には上限がない」と。

私はこっちの方を信じています。

悪いことがあった後は良い事がおこる。 もしくはその逆で良い事があった後は悪いことがおこるの法則よりも。

今回のコラムはマーフィーか?宗教か? みたいなキモイ事言ってるかもしれませんが ただただ、40歳越えて波乱万丈をいい加減卒業したいんですよ!

「私小説」にするには十分面白い人生かもしれませんが

そろそろ落ち着きたいんだわ!!

つーわけで2016年はひっそり幸せになる予定。
FXでボロ儲けしてやる!!
もうダメだね。あは〜ん!




●プロフィール
札幌育ち。
スナックのママ。
姉妹店「ザンギBar 衣(ころも)」もオープン。







●FORTUNA (フォルトゥーナ) レディースインポートブティック。パリ、イタリア直輸入のスタイルを提案。本場のエスプリを札幌に…
http://fortuna.frenchkiss.jp/

●アトリエJD PARIS/ヘアサロン パリでの技術を札幌で。パリトップヘアーデザイナーのスタイルを継承した大人のサロン 。
http://atelierjdparis.com

● grasp (グラスプ)レディースインポートブティック。ヨーロッパ&国内ブランドをミックスしたセレクトショップ。
http://www.grasp.cc/

● VERGUNDI (バーガンディ) パーティースタイルをトータルコーディネイトする、お洒落なレンタルブティック。
http://www.vergundi.com

● Aim (エイム) 世界からやって来たビーズが 表情豊かに人を彩るビーズ専門店。アクセサリーのお直しやオーダーも可能。
http://www.ai-m.jp

●Takechas Records (タケチャス・レコーズ)札幌の小さな音楽ソーホーから発信するレコード・CD/DVDなどを中心とした お洒落なWEBショップ。
http://www.takechas.com

●SNOW RAINBOW (カフェ・スノーレインボー)癒しの家具に囲まれた、焼きたてワッフルと美味しい珈琲。
http://www.dandc.jp/home/info

●ouchi (カレー&ごはんカフェ・おうち) 女性一人でも気軽に入れる、お酒とスープカレーのカフェ。美味しいランチもおすすめ!
http://www.mamma-cr.com/ouchi/

●スナック 糸 (スナックいと)時代はスナック!昭和meetsバブルノスタルジー 。姉妹店「ザンギBar 衣(ころも)」もOPEN。
http://twitter.com/snack_ito

●伝統漢方からさわ薬局 困ったらここへ…心の痛みと腰痛に強い、漢方相談薬局 。
http://www.kanpo-karasawa.com

●D&C (ディーアンドシー) 女性ならではの感性を生かした、優しくやわらかい店舗デザイン。
http://www.dandc.jp/home/info

● Ca et la (サエラ) すべての女性の美肌とリラクゼーションに 。家庭的な癒しサロン。
http://www.saera-e.com/

●Plumeria Garden (プルメリア・ガーデン)隠れ家的な癒しのサロンで、疲れたカラダにご褒美を。オイルマッサージがおすすめ。
http://ameblo.jp/plumeria--garden/

●Powder (パウダー)もっときれいになる、プライベート・メイクレッスン。濃くないのに確実に美しく…!
http://www.powder.jp/

● AI KOMORI (アイ・コモリ)大人女子の個性派ウエディングリング 。モードな雰囲気がお洒落です。
http://www.aikomori.com

●kreis (クライス)とっておきのふたりに…ウェディングリングの専門店。
http://www.kreis-w.co.jp

●SILKS (シルクス)上質なペーパーアイテムで、大人婚の演出をお手伝い 。
Webは只今、工事中です。

●北海道アルバイト情報社 北海道の元気に向かう様々な活動を積極的に応援する情報社。
http://www.haj.co.jp/

●MIDORIUM DESIGN(デザイン)シンプルで素敵なデザイン、HP製作など素敵です。
http://www.midorium.com/



Copyright (c) FIL Sapporo. All Rights Reserved.