15年前に観た椎名誠監督の「白い馬」。モンゴルの遊牧民少年の物語なのですが、その中には人間国宝の馬頭琴奏者が登場し、私はその音色にすっかり魅せられました。嵯峨治彦さんは、そんな馬頭琴・喉歌を奏でるミュージシャン。素朴で深い音色の魅力を伺いました。



嵯峨治彦さんが喉歌と出会ったのは、大学で物理を学んでいた’92年。「初めは口の中で音を共鳴させるのが物理的に面白いと思って真似事をしていましたが、だんだんと音楽的な面白さに気づきました」。'95年には馬頭琴を入手。弓で弾くとちゃんと音が出たことに感動し独学を始め、HARD TO FIND(札幌を拠点に民族音楽を演奏)との共演を機にライブもやるようになりました。その後、日本を訪れたモンゴル人奏者に教えてもらう機会をつくり、モンゴルにも足を運んで、今のスタイルができていきました。

かつて馬頭琴は各家庭で手作りし、自由に奏でられていた楽器。しかし後に「世界の舞台で通用するように」と政治的に修正が加えられ、昔ながらの奏者は淘汰されていきました。
嵯峨さんは’00年、モンゴル研究家・西村幹也氏を介して、ゴビ砂漠の遊牧民族で馬頭琴奏者であるネルグイさん(モンゴル国人間文化財)を知ります。「スタンダードの馬頭琴がクラシックのバイオリンなら、ネルグイさんの演奏はアイリッシュパブのフィドル。すぐに好きになって、指使いなどのクセを真似ました」。縁あって’01年にはご本人と会い、一緒に演奏をして後継者指名を受けました。

馬頭琴は“草原のチェロ”という呼び名もあるほど、優しくのびのびとした音色。「弾きたいからと楽器をつくり演奏しているネルグイさんの姿は、シンプルでとても強い」と嵯峨さんは言います。馬頭琴と喉歌のノスタルジックな音色は、聴いてこそ心に染み入るのを感じられるもの。秋の夜、心地いい風が吹く夕暮れ、目を閉じて嵯峨さんが奏でる音を聞いてみるのも、素敵な“自分時間”の過ごし方と言えるでしょう。

●オフィシャルホームページ
"http://tarbagan.net/nodo/

※札幌を拠点に全国でライブを展開。
「まこりん&嵯峨治彦ジョインとライブ〜月は聴き耳立てるでせう〜」
"http://www.fil-sapporo.com/event.html


嵯峨 治彦 Haruhiko Saga
馬頭琴・喉歌奏者。アジア中央部民族音楽デュオ「タルバガン」、語りと音楽の「野花南」、カンテレと馬頭琴の「RAUMA」、太鼓・歌・馬頭琴の「Agri」など多彩に活動。シンプルな馬頭琴という楽器で様々な風景を見せてくれます。



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