京愁

札幌から東京を経て、「悲しい色やね」の街に移り住み、 8カ月が過ぎようとしている。
言葉も、食も、習慣も違う。
関西特有の物言いになじめない。
そばのだし汁が口に合わない。
傘装着の自転車で縦横無尽に駆け巡る、おばちゃんたちのバイタリティーに圧倒される。
市内中心部の百貨店に駐輪場を完備する街は、
本音をさらし、ぶつけ合い、
ディープに、たくましく息づいている。


「そして僕は途方に暮れる」ことなく、京都に向かう。
駅に降り立った瞬間、なつかしい薫りに包まれる。
まち全体に漂う、ゆったりとしたリズムとテンポに身を委ねる。
群青色に輝く鴨川の調べが心地よい。
1000年以上の時空をつなぐ神社仏閣と御仏に人の道を学ぶ。
悠久のたたずまいに共鳴する。
雑念が消え去り、周囲と自己を客観視できる。
空気に溶け込むように、素直になれる。


9月のある日、東寺に足を運んだ。
境内を浄化する木々が、一部色づき始めていた。
緑葉と紅葉のコントラストが、季節の変わり目を告げていた。
春に芽生え、夏に彩りを競う。
秋を迎え、1枚、また1枚と赤みを帯び、次代のために音もなく枝を離れ、朽ち果てる。
いつの日か土に帰り、新たに生まれ来る生命の礎となる。
「太陽がくれた季節」を体現する、有機的な営みである。


如来様と菩薩様の違いをご存じだろうか。
前者は悟りの境地に達した御仏の尊称であり、後者は修行者の総称である。姿形も明らかに異なる。
数年前の酒席で好きなタイプの女性を問われ、無意識のうちに「菩薩のような人」と答えている。
完全無欠の如来像より、煩悩あふれる? 菩薩像の「微笑みがえし」に恋心を抱いていたのか…。
人生死ぬまで、修業である。


札幌出身の中島みゆきは〈まわるまわるよ時代はまわる〉と輪廻(りんね)転生を受け入れた。
〈今日は別れた恋人たちも 生まれ変わってめぐりあうよ〉と未来に思いをはせた。
京都出身の上田正樹は〈大阪の海は 悲しい色やね〉とブルースに乗せた。
〈さよならをみんな ここに捨てにくるから〉と過去に決別した。
札幌で生まれ育ち、大阪で暮らす47歳は、
現在も、過去も未来も、「迷い道」くねくね、である。




白船誠日/北海道日刊スポーツ新聞社勤務。
現在、大阪本社編集局制作センター整理グループ駐在。
記者時代は高校野球、サッカーのほか、スポーツ全般から
文社芸能まで取材。信心深い卯年生まれの射手座



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