口から魂が出ていくようでした
昨年見たフレデリック・バック展は、ひとりの人間が描いたとは思えない膨大な作品と、すべてに込められたメッセージに衝撃を受けました。
温かな絵に丹念に紡がれているのは、自然と人間とのかかわりや環境問題・戦争・・・、
自然と平和と動物を愛するバックさんならではのメッセージです。会場を出るときは、押し寄せる感動で立てなくなるほど。
ここ数年で最も深く印象に残り、有意義な時間を味わった展覧会です。(FILスタッフ・只野薫)
フレデリック・バックさんって、どんな人?
1924年フランスのザール地方に生まれました。'48年にカナダのモントリオールに移住し、文通で絆を深めていた女性、ギレーヌ・パカンさんと結婚しました。
美術学校などで教鞭を執った後、'52年ラジオ・カナダにイラストレーター、セットデザイナーとして就職。
40代半ばだった'68年にラジオ・カナダにアニメーション部門が設立され、本格的にアニメーション制作を始めます。
以来自然と人間の関係をテーマに、人と自然の調和、文明社会と環境問題などを提起する作品作りを続けてきました。
一脚のロッキングチェアが辿る運命を通じて、失われつつあるケベックの伝統的な生活や文化、家族愛、
現代文明への批判をユーモラスに描く「クラック!」(81年制作)、たった1人で荒地に木を植え続ける男を描いた「木を植えた男」(87年制作)で、
アカデミー賞短編アニメーション部門をそれぞれ受賞しました。現在もモントリオールに愛犬マリと住み、創作活動を行う傍ら、自然保護活動などにも参加しています。
アニメーション界に革命をおこした「木を植えた男」
とその他の作品は?
羊飼いのエルゼアール・ブッフィエは、たった1人で荒野に木を植え続けます。
彼の無償の行いは不毛の地に緑をもたらし、生命の輝きに満ちた場所へと変貌させます・・・。
フランス人作家、ジャン・ジオノ原作「木を植えた男」に感銘を受けたバックさんが、5年半の歳月をかけ、2万枚におよぶ作画作業の大半を1人でこなして作り上げた代表作です。
バックさんの独特な手法は多くのアニメーターに衝撃を与え、2回目のアカデミー賞短編アニメーション部門を受賞。
またこの映画に感動した人々によって、植樹活動が世界中に広がりました。
他にもさまざまな作品を生み出しています。生きものたちを次々と作り出していった創造主が、最後に作った人間は欲望をふくらませ殺戮を繰り返してしまう「トゥ・リアン」(78年制作)。北米に流れる大河、セント・ローレンス河を舞台に、
河に生きる生命の力強さと、生態系を破壊する人間の愚かさをドキュメンタリータッチで描いた「大いなる河の流れ」(93年制作)。
力強いメッセージに気持ちを揺さぶられるのと同時に、やわらかく生き生きとしたタッチやかわいらしいキャラクターなど、
ふんわりとやさしい気持ちにさせてくれます。
札幌初上陸・バックさんの展覧会はどんな内容?
バックさんの斬新かつ丁寧な制作手法、そして彼の人生観や自然への深い想いをたどる美術展です。
初期のスケッチやアニメーションの原画の展示と、アニメーションの動画9作品のダイジェスト映像を織り交ぜ、
フランスからカナダへと展開した彼の足跡と独特な表現力・手法・感性を余すところなく伝える内容です。
フレデリック・バック展 札幌展
【会期】
2012年3月17日(土)〜5月27日(日)
開館時間9:45〜17:00(最終入場16:30まで)
※休館日3/19、26、4/2、9、16、23
【会場】
札幌芸術の森美術館(札幌市南区芸術の森2丁目75番地)
【料金】
一般・大学生1,100円(前売900円)
中学・高校生900円(前売700円)
小学生600円(前売400円)
※前売券販売期間は3月16日まで。
教文・大丸・道新の各PG、チケット取り扱いのあるコンビニ、
札幌芸術の森美術館ミュージアムショップ他
【問い合わせ】
札幌芸術の森美術館:011-591-0090
【HP】
http://www.ntv.co.jp/fredericback

|
柳 亜古(フリーライター)
静かで美しく、人間の強さと自然の力を感じさせてくれるJ・ジオノの「木を植えた男」は愛読書の1冊です。
バックさんのやさしい眼差しと情熱が結実したアニメーション、この機会にどこかの劇場で上映してくれないかなあ?
春の匂いをかぎに芸森に行くのも楽しみ!
|
★Back Numberはこちらからご覧いただけます。
★Recommend Back Number
2011.3
2011.4
2011.5
2011.6
2011.7
2011.8
2011.9
2011.10
2011.11
2011.12
2012.1
|
|

*注意:画像の転載を固く禁じます。
|
|