ご自身の設計についてお答えください
Q1. 建築設計依頼を受けたとき、 もっとも大切にしていることは何ですか?

A. 建築は特定の土地に定着します。その土地には、多様な『状態』が存在しています。 例えば北海道だと、冬には雪が降り寒くなります。畑の中などは、景色は素晴らしいですが春には農薬散布があるので心配ですし、 冬は風を遮るものが無いので寒いかも知れません。逆に都心では、窓を開けると隣の家の壁しか見えないかも知れません。 このように多様な状態が地球上には存在していて、そのどこかに建築をすることになります。この環境の状態をとても大切だと考えています。 同時にお客様の要望や予算なども大切な事柄です。ですので、「もっとも大切な事柄が何か?」ということではなくて、 全ての事柄を平等に扱いながら設計をすることが、もっとも大切だと考えています。

Q2. 設計模型を見る時、 特に注目してほしいところはどこです か?

A. 今回は、昨年5月に東京乃木坂にある「TOTOギャラリー間」で開催された「五十嵐淳/状態の構築」展の時に使用した模型の1部を展示します この模型は全て「木」で精巧に作られていますが、人や家具など、スケール感が解かるようなものは全て排除しています。 なぜなら、空間の構成と光をシンプルに感じて欲しいという意図があるからです。 また今回は、同時に写真と図面も展示します。極限にまで抽象化された模型を眺めつつ、図面と写真を同時に見ることで、 シンプルな模型の中で繰り広げられるリアルな営みを想像していただきたいと考えました。

Q3. これから気持ちよい北海道の夏ですが、 「ぜひ足を運んでみてほしい」という作品をいくつか挙げてください。 またそのポイントもお願いいたします。

A. 私の作品は住宅が多いため、普段の見学は難しいのですが、富良野にあるラベンダーで有名な「ファーム富田」の入口にゲートをデザインしています。 また園内には、いくつか東屋のような屋根を設計していますので、初夏にぜひ足を運んで頂ければ幸いです。 昨年は、札幌市内に中華レストラン「茶月斎」をデザインしました。この空間は光をテーマとしていて、住宅作品などで取り組んできた光の雰囲気と共通性があるので、 美味しい料理と一緒にぜひ空間も楽しんで頂きたいです。
★ファーム富田/北海道空知郡中富良野町基線北15号
★茶月斎/札幌市中央区南3条西8丁目大洋ビル2F


Q4. 「ambient」という言葉に込めた思いは?

A. 「ambient」とは環境という意味が含まれています。 私はクライアントの条件なども全て含めて状態だと捉えています。 環境の状態を解いた建築を見て頂きたいと考え、「ambient」という言葉を今回、使いたいと考えました。

Q5. TOTOギャラリーで『状態の構築』を開催された時と、 今回の違いをお教えください。

A. 前回は模型のみの展示でした。 「TOTOギャラリー間」は建築専門の伝統あるギャラリーなため、建築関係者や学生が来場者の大半を占めます。 ですので、あえて模型のみの不自由な展示とすることで、見学者の想像力を最大限に掻き立てようと考えました。 今回は一般の方が見た時の事を考え、模型と同時に写真とパネルを展示することにしました。

Q6. ご自身が設計された「SYMBIOSIS」で作品展をされることへの思いをお教えください。

A. 自分で設計した空間で自身の展示を出来るということは、大変に 幸せな事だと思います。同時にとても楽しいです。キレイな展示に したいと考えています。

Q7. どんな方に見てほしいと思われますか?

A. 建築の専門家や学生はもちろんですが、さまざまな業種の方々にも見て、感じて頂きたいです。

SYMBIOSISについて
Q8. 「SYMBIOSIS」を設計される際のコンセプトをお教えください。

A. 物理的な面積としては小さな場所でしたが、意識の中で広がりのある空間を作りたいと考えました。 また札幌の都心に位置している環境を最大限に生かせるようにしたいとも考えました。 都市と文化が繋がりを持ち、また新たな文化が生まれる、そんな「場」の想像を目指しました。

Q9. 「SYMBIOSIS」に来たからにはぜひ見てほしい、と思われるポイントをお教えください。

A. 見てほしいといいますか、感じてほしいと思います。理屈や先入観ではなく、シンプルに感じて頂ければ幸いです。

Q10. 最後に、自由な一言をお願いします。

A. 私は北海道の佐呂間という小さな街で設計活動を続けてきました。 そのお陰で札幌や東京を介さず、ダイレクトに世界へと繋がることができたと考えています。 私は常に「北海道」を意識して活動してきました。 決して「札幌」などという意識ではなく、全体を意識して、全体によって相対的に札幌も他の街も魅力を放つと考えています。 ですので、札幌の方達も地方の方達も、「北海道」という総体的な感覚を見につけて欲しい。 そんなことを考えています。



建築家・五十嵐淳
1970年北海道生まれ。五十嵐淳建築設計事務所代表。 現在は札幌市と佐呂間町にアトリエがあり、北海道はもとより全国的な建築を手掛ける。 吉岡賞、日本建築家協会新人賞など受賞歴多数。 主な著書『五十嵐淳/状態の構築』(TOTO出版)、 『五十嵐淳/状態の表示』(彰国社)。 住宅、店舗デザイン、リノベーション等に関するご相談は、 お電話、Eメールにてお問い合わせください。

株式会社五十嵐淳建築設計事務所
TEL 01587-2-3524
jtim4550@coral.ocn.ne.jp
http://jun-igarashi.web.infoseek.co.jp/



●五十嵐淳 建築展「ambient」
会期/5月3日(木祝)〜5月27日(日)
場所/space SYMBIOSIS
(札幌市中央区南2条西4丁目 SYMBIOSISビル1F)
時間/12:00〜19:30(日曜〜19:00)

●蒲原みどり 絵画展「garden」【同時開催】
五十嵐氏の作品集『五十嵐淳/状態の構築』(TOTO出版)のブックデザイン・背景画を手掛けた、 ビジュアルデザイナー蒲原みどり氏の絵画展。
会期/5月1日(火)〜5月31日(木)
場所/イタリアンレストランφ(ファイ)
(札幌市中央区南2条西5丁目30-1)
時間/18:00〜25:00(水曜定休)
TEL 011-219-8244(席を要予約)




古川奈央(フリーライター)

『五十嵐淳/状態の構築』は、美しい風景と建築の写真と図面が一幅の絵画のように続いていき、建築が分からない人も堪能できる一冊です。 パリのポンピドゥーセンター、ニューヨークMoMAなどで取り扱われていることからもわかるように、日本はもとより世界からも注目を集めている建築家の作品集。 全国の書店にて販売しています。ぜひお手元に─。


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住宅「光の矩形」(札幌市)


住宅「相間の谷」(鹿追町)


住宅「House M」(旭川市)


中華レストラン「茶月斎」(札幌市)


ファッションビル「SYMBIOSIS」(札幌市)


作品集「五十嵐淳/状態の構築」(TOTO出版)

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