夏になると、料理専門誌は決まって肉特集を組む。夏だからといって肉の旨味が増すワケではないが、 私たちの頭と体の中にはパブロフの犬がごとく、夏=肉が恋しくなる仕組みができ上がっているのだ。
それは夏バテを防ぐために「肉からパワーをもらう」ということはもちろん、 「肉を食べる」というシチュエーション自体が、夏の気分同様にテンションを上げてくれることだから。
ほら、想像してみて。炭火で焼いた肉の香り、溢れる肉汁…。なんだか元気が出てくるし、気分も上がるでしょ。 さぁ、夏こそ肉! 肉食女子に捧げる夏に出かけたい、肉の旨い店を案内しましょう。


ワインで愉しむジンギスカン

夏肉気分にぴたりとはまる店といえば、やはり『ツキサップじんぎすかんクラブ』。半世紀以上の歴史を誇る、 ご存知、後ダレ系ジンギスカンの聖地。緑に囲まれた広大な敷地を眺めつつ味わうソウルフードは、たまらなく旨い。
ここは創業以来、マトン肉ひと筋。心配するような臭みはなく、コクのある旨味が逆にクセになる。 放射状にスリット(隙間)を入れたジンギスカン鍋は特注品。スリットから入る直火で肉を焼くことで、余分な脂が炭へと落ちる。 その煙で肉が燻され、さらに味わいを増す。醤油ベースのすっきりスパイシーなタレとの相性も抜群!
ジンギスカンとビールは最高の組み合わせだけど、2杯目以降はワインでぜひ。 こちらのご主人はシニアソムリエであり、店内には大きなワインセラーが設えてある。 赤ワインもいいけれど、夏ならキリリと冷えたコクのある白ワイン、ロゼスパークリングあたりと合わせてみたい。


肉の実力を直球勝負で味わう

第3のジンギスカン、塩ジンギスカンの雄『炭火焼 八仙2号店』も、テンションが上がる一軒だ。 塩味で羊肉を食べる塩ジンギスカン、略して「塩ジン」は、シンプルな味付けだけに、味わいや香りといった肉の良し悪しが歴然と出てしまう。 よほど自信がないと出せないメニューなのだ。特製塩をもみ込んだ肉は厚切りなので、肉汁をしっかりキープ。 焼きすぎず柔らかなうちに頬張れば、肉と肉汁のおいしさが直球で伝わってくる。
この塩ジンに欠かせないのが、辛味ネギ。唐辛子系を和えた白髪ネギは、肉で包んでよし、酒のアテにもまたよし!
もう1つぜひおすすめしたいのが、入荷日限定のスペアリブ。無口で渋い男前の主が、目の前で塊肉を焼く迫力のパフォーマンスごと楽しめるのだ。 少々わかりにくい立地なれど、探して出かける価値アリ。小さな店なので予約は必須。


鮮度抜群で美しい、道産ホルモン

札幌でもホルモン自慢のお店は増えているが、他店と一線を画すのは、ここ『ホルモン銀牙』。 ホルモンだけでざっと20種類以上。それだけでも心はやるが、このすべてが北海道産。 それも生産者に直接交渉して仕入れる銘柄ものが揃うのだ。いわば、北海道ホルモンの専門店。
牛のホルモンは、白老町産の黒毛和種「あべ牛」を中心とする和牛のみを使う。片面だけをじっくり焼いた艶やかなシマチョウは、ぶわっと溢れ出る脂の甘みが口の中に広がる。 それでいて脂のキレが良いのは、融点が低い黒毛和種の特徴なのだという。北海道らしい豚のホルモンは、放牧豚や黒豚のもの。 さらに珍しいところでは、羊やエゾシカの精肉とホルモンも用意している。
ホルモンの醍醐味は部位ごとの個性。それぞれの食感と妙味も引き出し、その違いを楽しめるようにと、下ごしらえにも道産調味料を使ったもみダレにも、 ひと工夫もふた工夫もしているのだ。歴戦のホルモン好きに捧げたい一軒。


肉料理の奥の奥を旅する

あー、肉の話は止まらない。最後に炭火焼き以外で肉料理のおいしいお店にも触れておこう。
『Palombe(パロンブ)』は肉料理と自然派ワインのお店。こちらの小鹿シェフは、パリや南仏の星付きレストランでの修業だけではなく、 現地の肉屋さんでシャルキュトリー(食肉加工)を学んだ料理人。パテ・ド・カンパーニュやハム、パテなどシャルキュトリーの盛り合わせはお見事! 肉料理の多彩さにときめくハズ。気分にも料理にも合うワインの提案も素敵。
食材の持ち味を大切に、季節に添う料理が楽しみな中国料理『茶月斎』。ここでは滝川産の鴨で仕込む、北京ダックならぬ「滝川ダック」は、 ジューシーな皮と肉が美味。残った肉やガラは、コースの締めに手打ち麺で登場。
1万円と少々お高めのコースなれど、北海道の食材の可能性を広げる一品なのでお試しあれ!




●ツキサップじんぎすかんクラブ
http://www.tjc1953.com/

●炭火焼 八仙2号店
http://hassen2nd.jimdo.com/

●ホルモン銀牙
http://ginga.c.ooco.jp/

●Palombe(パロンブ)
http://bistro-campagne.jimdo.com/

●茶月斎
http://web.me.com/tantaka1000/CHAGETUSAI/

※webに記載された営業時間、定休日が変更になっている場合もあります。
事前にご確認、ご予約の上お出かけください。




小西由稀(フードライター)

北海道在住のライター。主に北海道の食の現場を取材し、生産者、職人、料理人、そして北海道のおいしい食の魅力を、さまざまな媒体で発信中。 また、食のアドバイザー、講演活動も。北海道フードマイスター。 主な著書に「おいしい札幌出張〜45の美味案内」「食のつくりびと〜北海道でおいしいものをつくる20人の生産者」などがある。


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●ツキサップじんぎすかんクラブ



●炭火焼 八仙2号店


●ホルモン銀牙


●Palombe


●茶月斎

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