海もあるし、山もあるし、けっこういい場所だよ。遊びに来いよ、住んでもいいよ。
秘密って……隠してるわけじゃないけどね。
小樽と札幌のちょうど中間にあるまち銭函。小樽でありながら小樽とは別の道を歩いているような、独特の雰囲気が漂うまちです。歴史的に見ると銭函はちょっと古いまちです。木造の駅舎が印象的なJR銭函駅は、北海道で最初に開かれた駅の一つ。他にも古いものがまちのあちこちにひっそりと佇んでいます。その一方、若者であふれるドリームビーチもあれば、スキー場にホースランチ、山ガールも地元のベテラン登山者にも愛される春香山や銭函天狗山などなど、アクティブな側面もたくさんあります。銭函エリアは、古いものと新しいものが入り混じった、おもしろい場所なんです。
でも、意外とこの良さ、おもしろさは知られていないよう……。自分たちだけで楽しむのはもったいない! もっとたくさんの人に銭函を知って欲しい! そんな気持ちから地元の女性3名で「OTARU銭函の秘密マップ」を作りました。マップで銭函を案内するのは、鯨森惣七さんが描いたゆるくて味わいのあるイラストたち。グルメ情報を入れて、秘密という鍵も埋め込んで……と、あれこれ欲張りました。秘密って魅惑的な響きでしょう? 子どもの頃を思い出しませんか? さあ、マップを手にしたらあなたの中の少年・少女を呼び出して、いざ銭函へ!
潮の香りを吸い込んだら
少年・少女になって
JR銭函駅で降りると目と鼻の先に海があります。潮の香りをかぐと「ああ、銭函に帰ってきたんだ」。ホッとすると同時にテンションも上がります。昨年、湘南に行く機会がありました。江ノ電を降り、若い男女のグループの後ろを歩いていると、一人の女の子がこう言いました。「海の匂いがする!」。しばし海の匂いの話で盛り上がる彼らの声を聞き、心のなかで「うん、するね、するね」と相づちを打ちながら、にやにや。銭函も湘南も同じです。銭函に着いたらまず、潮の香り? 海の匂い? をかいでください。10代にもどりますか、それとも20代前半にしますか? 皆さんが潮の香りではしゃいだ年齢にモード変更をしましょう。
海に浮かぶサーファーは
銭函の冬の風物詩
銭函の海に浮かぶサーファーを見たことがありますか? JRの車窓から見える真冬のサーファーはいまや銭函の風物詩。銭函海岸には秋から春にかけて良い波が立つポイントがあるそうで、波を求めて銭函に通いつづけているうちに、とうとう移り住んでしまったサーファーもいるほど。この7月には銭函ビーチクラブというサーファーの組織が主催するビーチクリーンが行われ、私も初めて参加してきました。浜辺には冬の荒波に運ばれたたくさんのゴミ……最初はどこから手を着ければ良いか戸惑いましたが、みんなでやればなんとかなるものです。海を大切にしながら海で遊ぶ。銭函海岸では密かにこんな活動も行われています。
歴史のあるまちにある不思議なもの
黒っぽい四角錐の石は何?
歴史が古いということもあり、銭函エリアには密かな見どころ、興味深いものがあります。銭函駅前の海岸通沿いにある四角錐の黒っぽい石もその一つです。注意しなければ見逃してしまいますが、一度見ると気になってしょうがありません。実はこれと似たような石が銭函や張碓の海岸にゴロゴロしているんですね。この石について色々な方に取材しましたが、昔の船着場で使われていたとか、鉄道を敷く際の護岸工事に使われたとか、いつくか説はありましたが、確証を得ることができませんでした。でも、分からないということは、これから謎を解く楽しみもあるということ。ぜひ実物を見て、想像をめぐらせてください。新説を期待しています!
アーティストや作家が集まるエリア
個性的なアトリエや工房も
芸術家や作家さんには大変個性的な方が多いですね。注文家具を制作している「銭函工房」の奥村さんもその一人、とても素敵な方です。工房を訪れたときに思わず声をあげてしまうような不思議なものを発見しました。庭にバスの停留所があるんです。「オクムラガーデン前」。行き先は「オダマキ通り行き」と「栗の坂行き」。どちらも実際にお庭の中にありました。思えば銭函工房さんはちょっとしたジブリワールド、バス停で待っていたらきっとネコバスが来ますね。他にも、ガラス、陶器、織物の工房、アーティストのギャラリーなどがあちこちに点在しているのはこのエリアの特徴でしょう。小樽や札幌に近くて適度な田舎具合がいいという方も入れば、自然にインスパイアされる場所と話す方も。このエリアに足を踏み入れたら、あなたの中のクリエイターが目覚めちゃうかもしれません。
銭函エリア星三ツグルメその1
名門ゴルフ倶楽部の銭函ラーメン
旅の楽しみの一つは、その土地のおいしい食べ物を食べること。銭函エリアの星三ツグルメ、まずは意外な場所の銭函らしいものをご紹介します。
銭函には海の幸を使ったラーメンを提供しているお店が何軒かあります。写真は小樽の名門ゴルフ場、小樽カントリー倶楽部の「銭函ラーメン」です。20年もつづく名物メニューで、試行錯誤が重ねられ今の味になったのは10年前とのこと。濃厚な魚介スープと新鮮なシーフードがたっぷりのラーメンは上品な味です。ススキノでラーメンを食べそこねた道外のお客様がこちらで食べて帰ることもあるそうです。ゴルフをしない一般の方も大歓迎!とのことです。景色も素晴らしいのでぜひゴルフ場でラーメンをお試しください。
銭函エリア星三ツグルメその2
イチゴ果肉入り!KAMOMEのかき氷
今度はマップに載っていないお店です。海岸通に面したKAMOMEでかき氷はいかがでしょう。手作りのシロップにはイチゴの果肉がゴロンと入っています。練乳イチゴを頼むと「練乳はかけ放題です。足りなければ追加してくださいね」と声をかけてくれました。大きめのカップもうれしいです。お店の外にある椅子に腰掛けて潮風に吹かれながらかき氷。絵になりますね。急いで食べると、頭イタタタになりますのでご注意を!
銭函エリア星三ツグルメその3
隠れたおいしいパン屋さん
マップの取材を進めるまで、このエリアで私はパン難民だと思っていました。人づてに話を聞いたり、秘密を探したりしているうちに、銭函エリアらしいすばらしいパン屋さんに出会いました。銭函にある隠れ家レストラン夢香舎(むこうや)は、手作りの料理やデザートがおいしく、女性に人気のお店です。天然酵母のパンを販売していて、ハード系もあるのが嬉しいです。市販のものに飽き足らず、自分で手作りしているというご主人のマーマレードも絶品です。張碓には月2回しか開かない幻のパン屋さん、パリーナプチパン工房があります。小さな店内には道産素材にこだわった様々なパンが並び、子どものためのパン教室なども開催されています。そのほか、小樽カントリー倶楽部には金時豆がぎっしり入ったパン、カフェハリウスには業務用の角食も。隠れていたり、たまにしか開かなかったり、まさかのところにあったり……。これはとても銭函らしいと私は思うのです。
スキー場が一面のゆり園に!
オーンズ春香山ゆり園
新たなオーナーを得て復活したスノークルーズオーンズ。地元にとってこのニュースはとても明るい話題でした。そしてまさか、スキー場がゆりの花でいっぱいになるなんて……。2013年7月13日から道内最大規模のゆり園としてオープンしました。スキー場に訪れたことのある方は分かると思いますが、海から山までの勾配が急なので、石狩湾を上から眺めるような気分になります。斜面いっぱいに植えられたゆり越しに見る海、リフトに乗って見下ろすゆり。8月3日〜11日まではナイター営業が行われます。未体験のことばかりでドキドキさせられますね。
あれこれ書いていると紹介したいところが次々と浮かんできて悩ましいです。でも、本当の楽しみは、皆さんそれぞれがお気に入りの場所や秘密を発見することにあると思います。秘密マップはあくまで小さな旅のヒント、あなたの中の少年・少女が本当の案内人です。子どもの心にもどって、ゆるり銭函エリアをめぐってみませんか。思わぬ発見に、あっと声を上げたり、小躍りしたりするかもしれませんよ。
「OTARU 銭函の秘密マップ」入手先はこちらをご覧ください。
http://www.otaru-jin.jp/column/2013/07/otaru-1.html

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杉本真沙彌(すぎもとまさみ)
(フリー編集者・ライター)
小樽生まれ、ほぼ小樽育ち。ウェブサイト『小樽人』の運営スタッフ、「OTARU 秘密マッププロジェクト」代表。海と猫が好き。小樽詩話会に所属、詩も少し書いています。
http://www.otaru-jin.jp
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人のいない静かなおたるドリームビーチ

鯨森惣七さんの少年が「ほらネ」とつぶやく「OTARU銭函の秘密マップ

半分に折れたウィンドサーフィンの板が二枚打ち上げられていました。頭に乗せてゴミ収集所に運びます。これが意外と重いそうなんです!

海岸にも同じような石がゴロゴロ転がっています

本物と間違うようなバス停。さすが作家さんの作るものはちがいます

すり鉢に入っている銭函ラーメン。魚介の火の通り具合も絶妙です

通りを見ながら食べるのが銭函スタイル。丸ごとイチゴがうれしい。8月末頃まで営業。10〜18時迄、雨の日は早く閉まることも

レーズンやくるみの入った夢香舎のハード系パンと小樽カントリー倶楽部の金時豆のパン

グランドオープンした7月20日のゆり園です。これからますます見事になります(photo by オーンズ春香山ゆり園)

張碓の恵比寿島。思わず立ち止まり、目を奪われる夕暮れの風景があちこちにあります
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