「食べ物は5年後、10年後の体と心を作るのです」と、美容栄養カウンセラーの上坂真智子さん。不眠や気持ちの不安定、肌や髪のハリの衰え、婦人科系の悩みーーそれらの悩みは、食生活を見直すことで改善されることも多々あります。明日を笑顔で迎えるために、今日の食事を変えてみませんか?
油は太ると誤解されがち。実はイイヤツなのです
〜オリーブオイルや青魚、くるみ〜
「油は太るから控える」という方、多いですよね。でも、いい油はしっかり摂っていただきたいのです。
まずは青魚やくるみ、シソ油(エゴマ油)、亜麻仁オイルに含まれているオメガ3系の脂肪酸。これは悪玉コレステロールや中性脂肪を低下させ、免疫力もアップするので生活習慣病の予防になります。体内に不足すると、血管や脳で炎症を起こしやすくなります。動脈硬化、脳の炎症によるアルツハイマー型認知症やうつ病にもつながると言われているんですよ。また、オメガ3系の脂肪酸は女性ホルモンを作るためにも必要なもの。一生の間にティースプーン1杯分しか作られないと言われている女性ホルモンは、いい油で作りたいですね。
くるみやアーモンドのナッツ類にはビタミンEも多く含まれています。ビタミンEはホルモンバランスを調整するので更年期障害の予防になりますし、抗酸化作用もある。血流も良くするので、若白髪や髪の毛のぱさつきも改善します。(若白髪の改善には鉄分と銅も必要なので、どちらも含まれているピュアココアはおすすめです)。くるみには、癒しのホルモン「セロトニン」の原料となるトリプトファンも多く含まれ、うつ病の予防に。また、メラトニンの分泌も促すので安眠効果もあります。寝る前に小腹が空いたらつまむといいですね。
オリーブオイルにも、老化につながる炎症や発熱を抑える働きがあります。特にエクストラバージンオイルには、炎症を抑えるオレオカンタールという成分が多く含まれています。また、オリーブオイルに含まれる脂肪酸の一つ・オレイン酸は大腸まで届いて排便をスムーズにします。ビタミンEも多く含まれていて、血流をよくして体を温めてくれますし、抗酸化作用や鎮痛作用、解毒作用、美白作用もあることがわかっています。ただし脂肪分ですから摂り過ぎには注意。ちなみに熱を通す料理なら安いオリーブオイルでもOKです。サラダオイルよりずっといいですよ。
赤ワインを飲んだら長生きするって、
どういうこと?
〜赤ワインや色の濃い野菜たち〜
最近「フィトケミカル」という言葉をよく耳にします。これは植物性化学物質のこと。野菜や果物に含まれ、体内で素晴らしい栄養として活躍してくれます。例えばトマトの成分であるリコピンは抗酸化力があり、ブロッコリーのスルフォラファンは肝臓の解毒力を上げます。カレーに入っているウコンのクルクミンは脳の老化防止、タマネギの硫化アリルはデトックス効果、人参のβ-カロテンは動脈硬化予防、ブルーベリーのアントシアニンは目の老化防止が期待できます。
赤ワインに含まれるポリフェノールが体にいいという話は聞いたことがあると思います。これもフィトケミカルの一種で、レスベラトロールというポリフェノールには抗酸化作用や抗炎症作用があり、また新陳代謝を活発にしてくれるので肌のハリや潤いもアップします。さらには長寿遺伝子を効率よく働かせてくれるんです(ちなみに長寿遺伝子のスイッチを入れるのは飢餓状態。長生きの秘訣が腹八分という話はよく聞きますね)。赤ワインはボジョレーよりも熟成したもののほうが抗酸化力は高く、紫外線の量が多かった年に作られたブドウのワインのほうがポリフェノールは多い。特にレスベラトロールが多いのは、カベルネ・ソーヴィニヨンと言われています。赤ワインはグラス2〜3杯が適量。飲み過ぎには注意しましょうね。
え?「お肉は太る」はウソだったの!?
〜肉、魚、卵、乳製品〜
「お肉も太るからあまり食べない」という話をよく聞きます。でもたんぱく質は、髪・皮膚・爪・血液・ホルモンなど私たちの体を作ってくれるとても大切な栄養素。脳内の神経伝達物質の原料にもなります。たんぱく質には動物性と植物性がありますが、動物性たんぱく質の方が体内で効率よく利用できます。うつ病との関係が深い「セロトニン」の原料となるトリプトファンも、植物性より多く含まれています。不足すると貧血や抜け毛、若白髪の原因になり、筋肉の量が減るので痩せづらくもなります。
たんぱく質は20種類のアミノ酸からできているのですが、そのバランスがいいものほど良質だと言われています。もっともバランスがいいのは卵で、次に肉、魚。だから一日に一個は卵を食べることをおすすめします。コレステロールが気になるから食べないという方もいますが、卵を排除するのではなく、まずはカロリー全体を見直しましょう。
ちなみに女性の美容に欠かせないコラーゲン。この材料になるのもたんぱく質で、生成を助けるのがビタミンCと鉄です。だから、動物性たんぱく質や野菜をきちんと摂ることは美容にも大切なのですね。栄養を知って食事を摂ることこそが、美に直結するんですよ。
植物性のたんぱく質(=主に大豆製品)を摂ればいいという方もいますが、植物性たんぱく質は体内でたんぱく質を合成する時に必要なアミノ酸や、コラーゲンの材料となるアミノ酸が足りないんです。植物性たんぱく質ばかりに頼っていると精神的に不安定になりやすく、不眠、肌あれにもつながります。ただ、大豆製品はたんぱく質の効率は劣るけれど、ビタミン・ミネラルが豊富です
ちなみに、砂糖や白米、白いパン、うどんなどは急激に血糖値を上げます。それを押さえ込もうとしてインシュリンがたくさん出て、急激に血糖値が下がる。このような血糖値の乱高下は、精神的なバランスを崩すきっかけになりますし、太る原因にもなります。玄米やお蕎麦、ライ麦パンや胚芽パン、玄米パンをはじめ、肉や魚などの動物性たんぱく質も血糖値を緩やかに上げてくれます。白いご飯を食べて、たんぱく質は食べないという方がいますが、これでは必要な栄養分が摂れず糖質依存型になってしまいます。糖質依存はメタボの原因になりますし、精神も不安定にします。
食事は薬ではないので、食べた翌日に効果が見えるということはありません。でも血となり肉となり、脳になり骨になる。食べ物は自分の体と心を作ります。外見だけをキレイにするのではなく、内側から磨いてキレイになって頂きたいですね。
(文・古川奈央)

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上坂 真智子(MACHIKO UESAKA)
たべるときれいをつなぐサロン「colan」主催の美容栄養カウンセラー、管理栄養士。サロンで個人的なダイエットや、美肌・美髪の相談にのるほか、料理研究家、管理栄養士としてさまざまな誌面でレシピやフードスタイリングを提案。「内側からのキレイ」を目指す女性のパーソナルトレーナー的存在です。
colan / http://www.colan.jp
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